名古屋地方裁判所 平成元年(ワ)3852号 判決 1990年8月10日
原告
山上貴一
被告
市原康夫
ほか一名
主文
一 被告らは、原告に対し、連帯して金一五九万二二九六円及びこれに対する平成元年二月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 訴訟費用は、これを五分し、その一を原告の、その余を被告らの負担とする。
三 この判決一項は、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
被告らは、原告に対し、連帯して金一九〇万四五一〇円及びこれに対する平成元年二月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
本件は、原告が左記一1の交通事故の発生を理由に被告市原康夫(以下「被告市原」という。)に対しては民法七〇九条により、被告土屋運送有限会社(以下「被告会社」という。)に対しては自賠法三条によりそれぞれ損害賠償請求をする事案である。
一 争いのない事実
1 交通事故
(一) 日時 平成元年二月二三日午前一〇時五分ころ
(二) 場所 愛知郡日進町大字赤池字箕ノ手二番地の七〇八先国道一五三号線路上
(三) 加害車 被告会社所有、被告市原運転の普通貨物自動車
(四) 被害車 原告運転の普通貨物自動車
(五) 態様 被告市原は、加害車を運転して本件事故現場にさしかかつた際、停止していた原告運転の被害車の発見が遅れ、原告車に追突した。
(六) 傷害 原告は全治までに六か月半を要する頸部挫傷、右手打撲、左下腿打撲挫傷、頸部痛及び右手腫脹の傷害を負つた。
2 責任原因
(一) 被告市原は、加害車の運転者として前方不注視の過失があつた。
(二) 被告会社は、加害車を自己のために運行の用に供する者である。
二 争点
被告らは、本件事故による損害額を争う。
第三争点に対する判断
一 損害額
1 治療費(請求も同額) 二五万六八六〇円
当事者間に争いはない。
2 交通費(請求も同額) 九二六二円
甲二の一・二、乙一、乙一二、原告本人によれば、原告は、本件事故による傷害の治療のため西崎胃腸科外科(原告宅から片道約六キロメートル)に二日間、竹内外科(原告宅から片道約三キロメートル)に九五日間、自家用自動車で通院したこと、その自動車の燃費として八キロメートル走行するのにガソリン一リツトル(一三〇円相当額)を要したことが認められるので、少なくとも原告主張の九二六二円の交通費を認めることができる。
3 休業損害(請求も同額)一二八万〇八三四円
(一) 乙三、乙四の一ないし三、乙六、乙七、乙八の一・二、原告本人によれば、次の事実が認められ、この認定を左右する証拠はない。
(1) 原告は、本件事故当時、アルミサツシ、シヤツター、エクステリア製品の販売及びこれら取付工事の請負業を営む訴外東海アルミ商事株式会社(以下「訴外会社」という。)の代表取締役の地位にあり、一か月五三万円の給与を得ていた。
(2) 訴外会社の従業員は本件事故当時九人で、そのうち原告の身内は四人であつたが、原告は、男兄弟三人とともに訴外会社の仕入、販売、受注及び施行を行ない、仕事量のうち八割は現場での仕事であつた。
(3) 訴外会社には役員報酬に関する定款の規定はなく、給与の支給については、役員といえども、会社を欠勤した日数分は日割計算して給与から控除されていた。現に、原告も、前記治療のため休業を余儀なくされた平成元年二月二三日から同年五月七日までは欠勤扱いとなり、この間の給与一二八万〇八三四円を受けることができなかつた。
(4) 原告の兄弟の仕事内容も原告とほとんど変わりはないが、同人らは役員ではないので、給与のほかボーナスを支給されているが、これらを合算した年収額は、原告の年収額とほぼ同額である。
(5) 原告の給与は税務上も給与所得として明確に処理されており、訴外会社の利益配当は給料とは別に処理されているなど、その税務処理は明確であつて不明朗な点は窺われない。
(二) 右認定の事実関係に照らすと、原告に対する給与は、これが役員報酬なる名称が使用されているとしても、その実体は全額が労働の対価としての性格のものであつて、被告主張の利益配当分等の性質を持つ部分は含まれていないと認めるのが相当である。従つて、原告は本件事故により一二八万〇八三四円の休業損害を被つたものと認めることができる。
4 慰謝料(請求一〇七万円) 八八万円
前記認定の原告の受傷の部位・程度、通院期間等を考慮すると、右金額が相当である。
二 損害の填補 九五万四六六〇円
原告が損害の填補として受領した右金員(当事者間に争いがない。)を控除すると、被告が原告に対して賠償すべき損害額は、一四七万二二九六円となる。
三 弁護士費用(請求二四万二二一四円) 一二万円
原告が被告らに対して本件事故と相当因果関係のある損害として賠償を求め得る弁護士費用は、本件事故時の現価に引き直して一二万円と認めるのが相当である。
四 結論
以上によれば、原告の請求は、一五九万二二九六円及びこれに対する本件事故当日である平成元年二月二三日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由がある。
(裁判官 寺本榮一)